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2024.06.06
翻訳や通訳の技術を向上させるには新聞の読み比べが効果的!?
#ブログ
AIの普及により、翻訳、通訳はこれまでと比較して遥かにわたしたちの身近なものとなりました。
インターネットで翻訳機能やAIを使えば簡単に翻訳や通訳ができます。
しかし、人が書いたり、話したりする言葉には、書き手や話し手の気持ちが込められます。
その気持ちを表現することが苦手なのがAIです。
人の気持ちをも翻訳、通訳するとなれば、やはり翻訳先の言葉がナチュラルに使えなければなりません。
そこでおすすめするのが、新聞の読み比べです。
同じ事柄を扱った言葉の違う新聞記事を読み比べてみると、それぞれの言葉でどのように表現されているのかがよくわかります。
今回は、その事例をいくつか紹介したいと思います。
1. トランプ氏の裁判に関する記事
日本経済新聞:トランプ氏裁判、全34罪状に有罪評決
ニューヨークタイムズ:Donald Trump was found guilty of all 34 counts.
以上の2つのヘッドラインを読み比べると「有罪判決」がどのように英語で表現されているのかがわかります。
インターネットの翻訳機能を使うと「有罪判決」は「Guilty」と訳されます。
また、「罪状」という表現があります。
AIを使って「罪状」と調べると「charges」と翻訳されます。
ここまで調べた結果に基づけば、多くの方は「Trump is guilty for 34 charges」と翻訳することでしょう。
この表現でも通じることは通じますが、ネイティブの方は「ちょっと馴染んでいない英語かも」と思われることでしょう。
また、日本経済新聞のヘッドライン「トランプ氏裁判、全34罪状に有罪評決」をAIを使って訳すと「Trump found guilty on all 34 charges in trial」となります。
ちょっと文法的にもおかしな表現になっていますね。
ですので、翻訳作業をする際には、翻訳先の言語のネイティブが書いた表現を参考にする、または真似るというのが効果的なのです。
次に以下の2つのヘッドラインです。
日本経済新聞:トランプ氏裁判、陪審員が評決に達する 近く結果公表へ
ニューヨークタイムズ:The jury in Donald Trump’s Manhattan criminal trial has reached a verdict and will present its decision shortly.
上記二つのヘッドラインを比較すると、それぞれの箇所が以下のように対応していることがわかります。
トランプ氏裁判:Donald Trump’s Manhattan criminal trial
陪審員が評決に達する:The jury......has reached a verdict
近く結果公表へ:will present its decision shortly.
「トランプ氏裁判、陪審員が評決に達する 近く結果公表へ」という表現をAIを使って翻訳すると「Jury reaches verdict in Trump trial; results to be announced soon」となります。
特に大きな間違いはなく、問題なく通じるでしょう。
しかし、日本語のヘッドラインがそもそも無機質な感じなので仕方ありませんが、訳文が機械的な印象を与えます。
感情がないというか、物語性がないというか。
しかし、「The jury in Donald Trump’s Manhattan criminal trial has reached a verdict and will present its decision shortly」と言われると「判決の発表までもう間もなくです」という、ちょっとワクワク感を煽るような文章になります。
おそらく、日本の新聞の無機質なヘッドラインよりも、アメリカ人に対してはこのような表現をした方が、読んでくれる記事になるのでしょう。
2. イラン大統領の死亡を伝える記事
日本経済新聞:イラン大統領の死亡を確認 墜落ヘリ発見、国営メディア報道
ニューヨークタイムズ:Rescuers found the crashed helicopter that had been carrying Iran’s president, Ebrahim Raisi, state media said, and there were no signs of life.
こちらのヘッドラインも日本語のヘッドラインの無機質感を表しています。
日本語のヘッドラインでは事実だけを淡々と伝えているそんな印象です。
しかし、ニューヨークタイムズのヘッドラインは物語調になっています。
そして、「死亡を確認」という部分は「no signs of life」と表現されています。
「no signs of life」を直訳すると、「生命の気配がない」「生命の兆候がない」となります。
おそらく、数名がヘリコプターに乗っていて、全員の死亡が確認されたということを伝えたいのでしょう。
しかし、「all dead」という表現を使ってしまうと、他国の大統領に対して、もうちょっと柔らかい言い方があってもいいかなと思います。
その点、「no signs of life」という言い方は、柔らかい表現だと思いませんか?
3. 消費者物価に関する記事
日本経済新聞:米消費者物価、4月3.4%上昇 3カ月ぶり伸び鈍化
ニューヨークタイムズ:U.S. consumer prices rose 3.4 percent in the year through April, a slight downtick in the inflation rate.
二つのヘッドラインを読むと「米消費者物価」と一見、訳しにくい表現が一目瞭然で「U.S. consumer prices」と表現される、ということがわかります。
「伸び鈍化」という表現についても「slight downtick in the inflation rate」と無理のない、気持ち良い表現がされています。
このように、外国語の新聞のヘッドラインや表現を参考にすることで、日本語の無機質なヘッドラインを無理して訳すよりも、通じやすい、翻訳先の言語のネイティブには馴染みやすい表現になるのです。
まとめ
新聞で使われる表現は「生きた表現」と言っても良いでしょう。
実際に、その言葉を話す人の興味をそそるような表現がされています。
従って、新聞の表現は、今、その場所で生きている人が実際に読んだり、聴いたりしている表現なのです。
ドラマのシナリオ、小説を読むことでも、もちろん翻訳する能力は高まります。
しかし、そこにはやはり「作り物」という感覚がまとわりつきます(ドラマや小説にもよりますが)。
その点、新聞は常にその社会、世界のことを伝えています。
翻訳の内容に自信がないときは、新聞記事を検索してみることをおすすめします。
弊社ではこのように、できる限り現地で使われている生きた表現を使うことを翻訳作業をする際には心がけています。
そのため、生きた英語が使われている新聞や雑誌などを表現のチェックなどで使っています。
社会問題や時事問題で使われる表現にも精通しているので、記事、企画書、助成金や奨学金などの申請書の翻訳にも対応できます。
記事、企画書、提案書、助成金などの申請書の翻訳が必要な際には、ぜひ、お気軽にご相談ください。