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2025.11.02
事業を海外展開するために重要な考え方とは?〜世界の企業に学ぶESG〜
#ブログ
みなさん、ESGという言葉を聞いたことはありますか?
聞いたことがある人は多いかと思いますが、実際に説明をできる人は少ないように感じます。
いま、企業には「利益」だけでなく、「地球と人の未来」に責任を持つ姿勢が求められています。
そのキーワードが ESG(環境・社会・ガバナンス) です。
この記事では、まずESGの意味と重要性をわかりやすく解説し、続いて Apple、Toyota、Microsoft など世界を代表する10社のESGステートメントを紹介します。
企業がどのようにサステナビリティに取り組んでいるのか、そしてそれがなぜ企業の価値を高めるのかを確認してみましょう。
この記事を読めば、世界のESGの潮流がわかると同時に、事業を海外展開する際に考えなければいけない社会的責任のヒントが見つかることでしょう。
ぜひ、参考にしてください。
1. ESGとは何か?──環境・社会・ガバナンスの3つの柱
最近よく耳にする「ESG」という言葉。
企業がどれだけ「地球と人に優しい経営」をしているかを測るための3つの視点のことです。
3つの視点とは、 E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス) です。
E:Environment(環境への責任)
最初の柱は「環境」です。
企業が自分たちの活動を通して、地球にどんな影響を与えているのか、という視点です。
たとえば、温室効果ガス(CO₂)の排出削減、再生可能エネルギーの利用促進、廃棄物やプラスチックごみの削減といった取り組みが挙げられます。
近年では、製造過程で出る二酸化炭素を減らしたり、リサイクル素材を使った製品を開発したりする企業が増えています。
「環境を守ること」は、余暇に行う社会貢献ではなく企業の責任になっているのです。
S:Social(社会への責任)
2つ目の柱は「社会」です。
企業は利益を生み出すだけでなく、社会の一員として人々の生活にどう貢献しているかも問われます。
たとえば、すべての人を尊重する職場づくり(ダイバーシティとインクルージョン)、働きやすい環境づくり(労働時間や安全の配慮)、地域社会との連携・ボランティア活動、人権尊重とサプライチェーンの倫理管理、などが含まれます。
社員や取引先、地域の人々を大切にする姿勢は、企業への信頼を生み、結果的にブランド力を高めます。
Sの基本的な考え方は「人を大切にする企業が、最終的に選ばれる」とも言われています。
G:Governance(公正な経営体制)
最後の柱は「ガバナンス(企業統治)」です。
これは会社をどのように正しく経営するかという仕組みの部分です。
たとえば、経営の透明性(情報開示・説明責任)、不正防止・コンプライアンス(法令順守)、トップだけに頼らない意思決定体制、企業倫理や内部統制の強化などが含まれます。
ガバナンスがしっかりしていない企業は、一時的に利益を上げても、いずれ不祥事や信頼の失墜を招きます。
反対に、透明で誠実な経営は、投資家や社員、消費者から長く愛される企業をつくります。
つまり、ESGとは環境・社会・経営の3つをバランスよく考えることです。
そして、いま世界中の企業に求められているのは、短期的な利益を追う姿勢ではなく、地球と社会の未来を見据えて行動することです。
2. なぜ今、ESGが重要なのか?
ここ数年、「ESG」という言葉は、経営の世界だけでなく、ニュースや投資、教育の分野でも頻繁に登場するようになりました。
では、なぜ今、これほどまでにESGが注目されているのでしょうか?
理由①:地球の限界が見えてきた
地球温暖化、異常気象、森林破壊、海洋プラスチック問題…。
こうした環境問題は、もはや遠い国の話ではなく、私たちの日常を脅かす現実になっています。
企業活動が環境に与える影響は大きく、その責任を果たさない企業は、社会的な信用を失う時代になりました。
再生可能エネルギーの導入や脱炭素経営など、「環境と共存する企業」こそが生き残る時代に変わりつつあるのです。
理由②:人を大切にすることがブランドを強くする
今の消費者は、単に「安くて良い商品」を選ぶわけではありません。
「この会社は人を大切にしているか?」
「子どもの未来を考えているか?」
といった価値観を重視して商品やサービスを選ぶようになっています。
社員の働きやすさや多様性への配慮、地域との関係づくりなど、
“人に優しい企業”が最も強いブランドになるのです。
理由③:投資家がESGを重視するようになった
もう一つ大きな変化は、「お金の流れ」です。
いま、世界中の投資家たちは、単なる利益よりも「持続可能性(サステナビリティ)」を重視するようになっています。
たとえば、ESG評価の高い企業に投資する「ESG投資」や、環境に配慮したプロジェクトを支援する「グリーンボンド」がその代表例です。
つまり、これからは「社会に良いことをしている企業」ほど、資金を集めやすくなるため、ESGに軸をおいた経営は企業の成長に直結しているのです。
理由④:ESGが持続可能な社会を目指す「共通言語」になった
ESGは、単なる流行語ではありません。
企業・投資家・市民・政府など、立場の異なる人々が同じ方向を向くための共通言語です。
「環境を守りながら、誰もが安心して暮らせる社会をつくる」
この目標を実現するために、ESGは世界中の人々をつな「架け橋」の役割を果たしています。
3. 世界の企業のESGビジョン
この章では、世界の有名企業が実際にどんなESGビジョンを掲げているかを紹介します。
各社の事業内容・特徴・ESGの方向性を一目で理解できます。
ぜひ、参考にしてください。
① Apple Inc.(アップル)
アップルはMacBook、iPad、iPhone、Apple Watchなど、パソコンから携帯電話、時計を製造する世界で知らない人はいないと言えるほどのテクノロジー企業です。
物理的なテクノロジーを提供する以外にも、App Store、iCloud、Apple Music などのデジタルサービスを提供しています。
アップルの製品はデザインと操作性が高く評価されており、世界的に人気があります。
また、環境面では再生素材や再生可能エネルギーを積極的に導入している企業です。
そんなアップルのESGビジョンは以下の通りです。
We’re looking forward to continued partnership with our suppliers to make Apple’s supply chain carbon neutral by 2030.
和訳すると、「アップルのサプライチェーンを2030年までにカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)にするために、私たちはサプライヤーとの継続的な協力関係を期待しています」というようになるでしょうか。
彼らのビジョンは彼らだけが環境に優しい企業になるのではなく、アップルのサプライチェーンに組み込まれている企業のすべてを環境にやさしい、地球や未来に責任を持った事業を求めていることを示しています。
② Microsoft Corporation(マイクロソフト)
マイクロソフトは、Windows、Officeなどパソコンには欠かせないソフトウェアを提供するIT企業です。
ESGについては「カーボンニュートラル」を掲げるどころか、「2030年までにカーボン・ネガティブ」を目標に掲げ、再生可能エネルギーの利用を拡大しています。
そんなマイクロソフトのESGビジョンは一部省略もしておりまが以下の通りです。
This is our pledge that Microsoft’s data centers will be… a force for good in the communities they serve.… become carbon negative, water positive and zero waste before 2030.
以上の文章を日本語に翻訳すると、「これは、私たちの誓いです。マイクロソフトのデータセンターは、<中略> サービスを提供する地域社会にとって善の力となります。
<中略> そして2030年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、ゼロ・ウェイストを目指します。」
マイクロソフトは会社の利益だけを追求するのではなく、地域社会にとっても、未来にとっても良い会社を目指していることがこの宣言からわかります。
③ Unilever PLC(ユニリーバ)
ユニリーバと言われて、ピンと来る人も入れば、そうでない人もいることでしょう。
ただ、DOVE(ダヴ)、LUX(ラックス)、VASELINE(ヴィアセリン)、ドメスト、ジフなどという商品名を聞けば、ピンとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はユニリーバはESGの先進企業としても有名で、サステナブルな原材料調達や、プラスチック削減、フェアトレードなどを積極的に行なっている会社です。
そんなユニリーバーのESG宣言は以下のようになっています。
Sustainability has long been a priority for Unilever. … Our approach has evolved … What has not changed is our commitment: sustainability is a strategic imperative for our business.
これを翻訳すると、「ユニリーバにとってサステナビリティは随分前からの優先事項です。<中略>私たちの取り組みは進化してきました。<中略>しかし、私たちのコミットメントは以前から全く変わっていません。サステナビリティは当社のビジネスにとって戦略としての必須事項なのです」となります。
この文面から、サステナビリティはユニリーバがビジネス展開を行う上での最優先事項かつビジネス戦略の不可欠な要素であることが伺えます。
つまり、利益の追求と同じくらい、むしろそれ以上にサステナビリティが重要であることが宣言されています。
④ Siemens AG(シーメンス)
シーメンスはドイツに本社を置く、総合テクノロジー企業です。
電力、交通、産業オートメーションなどのインフラの他にもスマートグリッド、スマートビルなどのデジタルインフラ、医療従事者向けのソフトウェアやアプリケーションを提供しています。
そんなシーメンスが掲げるESG宣言は以下の通りです。
We strive to decarbonize our operations and enable a climate-neutral society.
これを和訳すると「当社は、事業の脱炭素化を目指し、クライメイト・ニュートラル社会を実現できるよう努めています」となります。
「脱炭素化」「クライメイト・ニュートラル社会」という言葉が短い文に入っていることから、二酸化炭素の排出抑制にかなり力を入れているということがわかります。
⑤ トヨタ自動車
最後に日本が誇る世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車です。
事業内容については、特に説明する必要はないかと思います。
近年、自動車は二酸化炭素を排出する「悪」のように言われることもありますが、トヨタ自動車は早い時期からプリウス(ハイブリッド車)市場に打ち出したほか、二酸化炭素を一切排出しないミライ(水素燃料電池自動車)の開発・販売も手がけています。
将来的には、水素を燃やすことによってエンジンを動かす水素自動車の研究も進めています。
そんなトヨタ自動車が世界に向けて打ち出しているESG宣言は以下の通りです。
Our ultimate goal is zero CO₂ emissions at all stages of the vehicle life cycle.
これを和訳すると「私たちの究極的な目標は、製造から走行、処分まで、車のライフサイクルの全てにおいて、二酸化炭素の排出をゼロにすることです」となります。
トヨタ自動車も二酸化炭素の排出抑制にかなり力を入れていることがわかります。
まとめ
ESGは、「今の利益」ではなく「未来の価値」をつくる考え方です。
気候変動や格差、倫理的な経営など、社会が直面する課題に真剣に取り組む企業ほど、長期的に信頼され、選ばれ、支持されます。
その傾向は海外では特に強くなっています。
環境を大切にし、社会に寄り添い、公正で誠実な経営を続ける。
世界のトップ企業がこの方向へ舵を切っているのは、それが「正しいから」だけでなく、そうしないと生き残れないからです。
海外での事業展開を考えている企業のみなさん、すでに海外で事業展開をしている企業のみなさん、今一度、自社のESGについて考えてみませんか。
世界に向けたESG宣言の作成などが必要になった際には、ぜひお気軽に当社にご相談ください。