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2024.06.16
インバウンドのお客様向けの英文がひどい!?実存するガイドブックの悪文を紹介
#ブログ
新型コロナウィルスの蔓えんが落ち着き、日本各地でインバウンドの呼び込みが活発化される中、外国人に向けたガイドブックやパンフレットが積極的に配布されるようになりました。
しかしながら、地方自治体が作成したインバウンド向けの情報誌やパンフレットの中には、まるで素人や学生アルバイトが作成したような英文を目にすることが多々あります。
今回は、「この訳文、どうにかならなかったの?」と思う現存する地方自治体パンフレットの悪文を紹介します。
1. 【Special Offer】Catalogue Present
この文のオリジナルの日本語は「【特典】図録を一冊プレゼント」です。
おそらく、「【Special Offer】Catalogue Present」は日本人にしかわからない英語かと思います。
特に米語ではプレゼントを「present」ということは少なく、「gift」という表現を使う方が多いでしょう。
私であれば、「【Special Offer】A Free Art Catalogue」、「【Special Offer】You will Receive an Art Catalogue for Free」などと訳すでしょう。
2. Exhibits of archaeological and folk materials, and introduction to traditional crafts.
この文の原文は「考古・民俗資料の展示と伝統工芸品の紹介」です。
この文だけ読むと確かに「Exhibits of archaeological and folk materials, and introduction to traditional crafts」と訳したくなるかもしれませんが、この文はTOEFLやTOEICなどで頻繁に出題される悪文の好例です。
2つの文が「and」でつながっているので、動詞のかたちは同じでなければいけません。
正しく書き直すと「Exhibits archaeological and folk materials and introduces traditional crafts」でしょう。
3. The departure point of Kyushu railway and railway wonderland.
この文の原文は「九州鉄道路線の出発点、鉄道のワンダーランド」です。
日本語では意味が通じますが、英語で「The departure point of Kyushu railway and railway wonderland」と言われても意味不明です。
日本語のニュアンスをいかしながら英語に訳すとなると「Experience the wonderland of the railway at the departure point of the Kyushu railway」が良いでしょう。
4. The urban gallery hosts a variety of temporary exhibitions.
この英文を直訳すると「都市部のギャラリーがさまざまな企画展(一時的な展示)を主催」となります。
しかし、この英文の原文は「多彩な企画展を開催する都市型ギャラリー」です。
ちょっと、「あれ?」と思いませんか?
「都市型ギャラリー」が強調されるべきなのに、英文では完全に原文の意図が消えてしまっています。
忠実に訳すのであれば「The urban-styled gallery that hosts various exhibitions」が良いでしょう。
企画展は特にヨーロッパでは「temporary exhibitions」というようですが、企画展としていろんな展示を行っているわけなので、わざわざ「temporary」という必要はなく、「hosts various exhibitions(さまざまな展示を開催している)」で良いでしょう。
5. The museum’s theme is “a journey through history”
この英文を直訳すると「博物館のテーマは歴史を巡る旅」となります。
しかし、原文は「『歴史への旅体験』をテーマにした史料館」です。
同じようなことを言っているようで、ニュアンスが異なります。
原文通りのニュアンスをうまく表現できなかったために、ごまかしたという印象さえ受けます。
和文に忠実に訳すのであれば、「The Theme of an Archive is “a journey through history”」でしょう。
しかし、もっと魅力ある英文にしたければ「The archive take you to a journey through history(資料館があなたを歴史の旅に連れていく)」などとした方が良いでしょう。
6. Many skeletal preparations of dinosaurs in the museum are amazing.
この英文を日本語に直訳すると「博物館にある多くの恐竜の骨格標本は素晴らしい」となります。
しかし、この原文は「一堂に並ぶ恐竜の骨格標本は大迫力」です。
英訳された文は幼稚な印象さえ受けます。
何が大迫力なのかというと「一堂に並んでいるから」大迫力なのです。
英文ではこの重要な部分が欠落してしまっています。
「The impressive display of dinosaur skeletons all lined up in one place」などとする方が良いでしょう。
まとめ
日本各地でインバウンド、インバウンドと盛り上がっています。
しかし、地方自治体や関連団体が作成するパンフレットやガイドブックには「えっ」と思う表現や、意味が通じない表現が多くあります。
行政が主体となるために、できる限り安い翻訳業者に発注することになり、結果として質の悪い訳文ができあがってしまったり、翻訳者に伝えたいメッセージやニュアンスを細かく伝える作業が手落ちになったりするため、良い訳文ができあがりません。
外国語で作成されるガイドブックや冊子は外国人が日本に持つ印象を形造ります。
できる限り品質の高い英文であってほしいと翻訳者としては思います。
お値段、納期などご相談にのりますので、インバウンドのお客様向けに文章を作成する必要がある場合は、お気軽にご相談ください。